昭和の前半期に生きた女性なら、料理の味付けが「さしすせそ」というのは常識的に知っているが、現在は、毎日料理を作るという家庭も少なくなり、また調味料の発達から家庭料理そのものが簡便化されてきているため、調味料の「さしすせそ」を知らないという人も存在するだろう。砂糖、塩、酢、醤油、味噌という5つの調味料を味つけで加える順番のことで、これには理由があって実に合理的だ。
あくまでも煮物のような味を素材に染み込ませる料理においてだが、まず初めに砂糖がくる。砂糖は分子式が大きく、素材になかなか浸透していかないので、早い段階で入れて味をつけるのが目的である。一方で塩については砂糖と逆で、味が染み込みやすく、素材から水分を奪って固くする性質がある。だからといって最後に塩を入れると、少し困ったことも起きる。
酢、醤油、味噌という発酵を利用した調味料は、熱によって風味が飛んでしまいやすい。最後とされる味噌に至っては、味噌汁で火を止めてから味噌を溶く人もいるくらいで、それだけ温度にデリケートなのだ。塩が最後だと他の調味料の風味を失いかねないので、砂糖の次になっている。