戦で一番多く命を落としたのは武士ではなく農民

Vol. 55
 戦で一番多く命を落としたのは武士ではなく農民

日本は長い間内乱によって各地で合戦が起こっており、おびただしい数の戦死者が出ている。その中でも戦国時代と呼ばれる時期には、多くの戦闘員(武士)以外の命が消えていったと考えて不思議ではない。

大道寺友山という人が書いた「落穂集」という本によると、合戦で1000人の死者がいれば、100人から150人は領民だとされている。衝撃的なようだが、良く考えるとそれほどおかしくはない。

まず、領民は自領における民であるので、最も多いのは食糧生産を行う農民だろう。武士は非生産民であるから、職人や商人の交易だけで全体の食物を支えるのはとても難しい。

また、武士の身分は領民よりも高いので、必然として三角形型の人口分布になり、その底辺はやはり農民である。合戦ともなれば必要なのは戦闘員だけではなく、例えば食事を作ったり、土木作業があったり、治療したりと、おおよそ戦い以外の労力も必要となるため、領民を動員するのは当然だ。

結局は動員される農民も多く、足軽として先頭を切って進む農民は命を落とす割合も高いという事である。