Vol. 293
寿司屋の湯飲みが大きい理由〜ルーツは江戸の屋台寿司
今では回転寿司があまりにも盛況になりすぎて、「回らない寿司屋」という呼びかたが存在する。カウンター越しに職人が握る寿司屋の握り寿司は、回転寿司の登場直後なら圧倒的に食味において優位にあったものの、回転寿司業界の努力によって、差がなくなっているのを感じている人も多いはずだ。
回らない寿司屋に入ると、お茶(あがり)が大きな湯呑みに入って出てくる。そんなに飲まないと思っていても、いつの間にか飲んでしまって、おかわりしてしまう不思議さがある。
寿司屋の湯呑みが大きい理由は、江戸前寿司によって屋台で寿司を食べる文化が広まったことが大きい。当時は、江戸前(東京湾)の新鮮な魚を握った寿司を、短い時間で立ち食いするという食べ方だったことから、せっかちな江戸っ子の気性もあって客の回転率が異常に早い。さながら、通勤時の立ち食いそば屋である。
屋台においては、店主は忙しすぎて随時お茶を出すわけにはいかず、屋台であるがゆえに水を無駄にできないという側面からも、大きい湯呑みでお茶を出したとされている。