西遊記で有名な「三蔵法師」は名字や名前ではない

Vol. 479
 西遊記で有名な「三蔵法師」は名字や名前ではない

西遊記で有名な三蔵法師の「三蔵」とは苗字や名前ではない。釈迦の教えを弟子たちが記した経典は3つの「蔵」に分かれ、3つに精通している者の尊称として三蔵が使われる。

3つの蔵とは、経蔵(釈迦の教え)、律蔵(戒律)、論蔵(解説書)である。つまり、三蔵法師とは三蔵に通じている高徳な法師を意味しているため、固有の人物を表しておらず、三蔵法師は西遊記に登場する玄奘(げんじょう)だけではなく他にも存在する。

本来の三蔵法師はこのような意味を持つが、やがて尊称としての意味合いが裾野を広げ、玄奘のようにインドや西アジアから教典を持ち運んだ僧を三蔵法師と呼ぶようになった。

こうなると、どこまでが本来の意味の三蔵法師で、どこまでが教典を持ち帰った三蔵法師であるか区別が付かなくなる。教典を持ち帰った僧は150人はいたとされるが、それらは全て後者の三蔵法師と言ってもおかしくないのである。三蔵法師は決して自称ではなく、他者が呼ぶ尊称であるために、尊敬の念で三蔵法師と呼ぶことが制限されていたわけではないからだ。