Vol. 592
録音した声は自分がいつも聞いている自分の声と違う
録音した自分の声を聞くと、十中八九、予想した自分の声と違うことに驚く結果となるだろう。今まで生きてきて感じていた自分の声が、こうだったのかと知る瞬間である。
その理由は、自分の体(特に骨)を通して伝わる内耳共鳴という音と、空気を伝わって他の人の耳から入る外耳共鳴という音の違いだ。内耳共鳴だけを聞くのは簡単で、耳を塞いで声を出せばよい。しかし内耳共鳴が体を通して聞こえる声である以上、遮断して外耳共鳴だけを聞くことはできない。これは体の構造上避けがたい現象であるため、他の人に聞こえている自分の声をリアルタイムで聞くことは、正常な耳の持ち主ならできないということである。
自分の中ではかなり上手に声マネできていると思っても、あまり似てないと言われてしまうのは、自分の内耳共鳴を声マネの対象に近づけていることが原因だ。
そう考えると、声マネを上手にする人というのは、自分に聞こえる声ではなく、他の人に聞こえる声を調整してマネる技術を身につけていることになる。それ故に、モノマネだけで芸として成り立つほどのジャンルなのだ。