白々しいウソをつくと、「ウソをつけ!」と怒鳴られることがある。怒鳴られなくても明らかなウソには突っ込みとして「ウソをつけ!」というのが日常会話でも多くみられ、別に何の違和感もない。
しかし、良く考えてみると、ウソをついている人に更にウソをつくように命じているのだから、文法上はとても奇妙な用法である。実際は「ウソをつくな!」と使われるべき場面で、もっとウソをつくように命令するのはいかにもおかしい。仮に本当にそのまま白々しいウソをつくと、間違いなく今度は怒鳴られるだろう。
つまりは、ウソをそれ以上つくなという強調と、ついたウソへの非難の意味で「ウソをつけ!」と言っており、このような用法は、とても外国人には理解できないと思われる。
なぜこの言い回しが古くから使われているのかは定かではなく、だからといって間違っているというわけでもないし、他にもいくつか同様の例はある。まだウソをついていない人にウソをつけと言えばそれは命令だが、既にウソをついている人に言えば、それは非難になるという変わった用法で、日本語は実に奥深い。