関東以北の人にとっては、以前まで薄口しょうゆはそれほどなじみの調味料ではなかった。大量生産が可能になって流通が発達するまでは、しょうゆといえば今で言うところの黒い濃口しょうゆである。
一方で、関西以西の人にとっては、うどん汁に色の違いが現れるように、薄口しょうゆは以前から多く使われていた。濃口しょうゆの黒い色は強烈に塩辛いイメージがあるのか、色の薄いほうが何となく上品に見えることもあって、薄い色で素材の色が際立つ薄口しょうゆは、京料理などでも用いられる。
薄口しょうゆと濃口しょうゆの違いは、単に色と風味や旨みなどの製法による成分の違いであり、むしろ薄口しょうゆのほうが塩分濃度は濃いのが一般だ。高血圧だからなどと、「薄いしょうゆ」をイメージして薄口しょうゆを使うのは間違いなので気を付けたい。塩分が高く少ない量で味付けができることは、より透明度の高い汁を得られることになるので、その目的で薄口しょうゆを使うことは理にかなっている。