燗は温度の違いで呼び名がある。熱燗、ぬる燗、人肌の燗など、微妙な温度の違いではあるが、好みというのは千差万別で、どの温度ならどう呼ばれるかに基準はない。
人肌の燗と聞くと、人間の体温である36℃〜37℃を想像しがちだが、もう少し高い温度の場合もある。実際のところ、水に対する温覚は、空気に対する温覚と異なるのが普通で、気温の30℃は暑く感じても、水の30℃は冷たく感じるのはそのためである。
アルコールは揮発性が高いので、熱燗と呼ばれる50℃程度を大きく超えて温めるのは、性質までを変えてしまうので行われない。人肌の燗やぬる燗が好まれるのも、日本酒の風味を損なわないための嗜好で、お猪口(おちょこ)で飲まれる時には少し温度が下がるので、人肌の燗は少し高めというのも納得できる。