Vol. 103
エジプトではフンコロガシは聖なる虫
古代のエジプトの人々は太陽を崇め、やがて太陽神ラーとして神格化していくことになる。東から昇る太陽は、西へ沈み死者の国を旅すると考えられ、人が死ぬとラーと共に死者の国へ旅立つということである。
ラーは、昼はマンデト、夜はメセケテトという舟によって移動する。夜に冥界ドゥアトを通過したラーは、朝には東から復活するのだが、そのときにはスカラベといって甲虫のフンコロガシの頭を持って登場する。フンコロガシは、動物の糞を丸めてコロコロと転がして移動し、それが丸い太陽を象徴していると考えられたのである。そして、昼はハヤブサの頭に、夜は雄羊の頭へ姿を変え、日没からまた死者の国へ旅立つのだ。
このような信仰から、古代エジプトではスカラベ(フンコロガシ)は聖なる虫であり、復活の象徴であるとして崇拝される対象になっている。人型にフンコロガシの頭など、信仰していなければ思いつきもしない。しかし、古代から神聖な生き物とされてきた動物は数知れず、種類を問うことには意味がないのである。