Vol. 141
インド仏教のトップは佐々井秀嶺という日本人
佐々井秀嶺という人を知っているなら、インドか仏教のどちらかに知識を持っていることだろう。秀嶺という名は僧侶としての名で、日本での本名は佐々井実という。
日本でほとんど知られていない秀嶺は、タイを経てインドに渡り、そこでヒンドゥー教社会からインドでの仏教の復興に生涯の大半を費やしている。インドの国籍を得ているので日本人ではなくインド人であるわけだが、特筆すべきはインド仏教界において、秀嶺はトップの座にいるということだ。
インドではバラモン教からヒンドゥー教の流れで、カーストという身分階級が存在した。名目上は無くなったことになっていても消え去っておらず、カーストにおける4つの分類からも外れているアチュート(ダリット)は、奴隷と訳される最下級のスードラよりも更に下の身分である。
このダリットを中心として秀嶺は仏教を広げていく運動を起こす。それは言ってみればカーストに対する反行為であるために、ヒンドゥー教と敵対する関係となって身の危険すら伴った。だが、秀嶺の運動は次第に改宗者を集め、インドにおける仏教徒の数は、公表されている数字よりも遥かに多いとされている。