毎朝顔を洗って鏡を見るというのは習慣であるが、特に女性は身だしなみをチェックするために鏡を日常的に持ち歩いている。自動車でも状況の確認のためには必須であるし、最近ではスマートフォンでカメラを使って鏡のように見せるアプリも存在するくらいだ。
鏡に自分の姿が映るのは、単にガラスに反射率の高い金属の膜を張り、光を完全に反射するようにした構造のためである。暗い部屋の窓ガラスに、明るい側にいる自分の姿が映る体験は誰でもあるだろうから、原理的には更に反射率を高めただけだ。
ところで人間の目に見える情景というのは、物体が反射する光の違いを網膜で認識しているに他ならない。暗闇では人間の目が物体を認識できないのは、寝る前に電気を消した時に良くわかるだろう。
目で見えるためには光の反射が不可欠なので、厳密に考えると物体から反射した光が目に入るまでに微小な時間が生じている。つまり鏡で見ている自分の姿は、ほんの一瞬だけ過去の自分から反射した光であるという事実を考えると、毎日の鏡に映る姿も興味深いものである。