Vol. 184
なぜ肖像画と目が合ってしまうのか?
多くの肖像画の場合、目は正面を向いているように描かれている。このような肖像画では、見る位置を変えてもやはり正面を見ているので、肖像画を眺める人からすると、常に自分を見られているように感じて不気味だ。
この場合の正面とは実物の人間のように3次元によるものではない。その証拠に、目が片方に寄っている肖像画において、その方向に移動して眺めても目が合う事などあり得ず、常に肖像画の視線から外れている。正面を見ていない肖像画(写真でも同じ)といくら目を合わせようとしても、3次元ではないので無駄な努力である。
つまり、人間というのはそれが2次元の絵であっても、実物の人間のような3次元的な考えかたを自然にしてしまい、自分が動くと相対的に相手(肖像画)の見えかたが変わるような錯覚に陥っている。極端な例を挙げると、例えばうつむいた人の写真を、顔の上のほうに持っていき、写真を見上げるように見たとしよう。そのときに写真の中の相手がこちらを向いていたら、それは既にホラーである。