昔から理容店のことを床屋という。これは現代でも同じであり、美容店はそのまま美容室などと呼ばれているが、理容店をそのまま呼ぶ人はそれほどおらず、男性の頭髪を整える場所は今も床屋である。
床屋という名称は江戸時代までさかのぼり、髪を結う職業の者を髪結い床と呼んだことに由来する。髪結いという職業は、当然男性にも女性にも存在するとはいえ、髪結い床と呼ばれるのは男性の髪結いが自分の店(床)を持っている者で、床屋が理容店というのは、歴史的に変わっていないことになる。ちなみに床というのは、床の間の床のことを表す。
昔の男性は月代(さかやき)といって額から頭頂部を剃っていたため、髪結い床の世話になることが多かった。剃った状態から少し生えてきただけでも見た目が悪いため、ちょんまげが多く取り入れられた時代には髪結い床は繁盛しただろう。他に名残がある呼び方としては、床屋という名称だけではなく、力士の髪を結う職業を床山と呼ぶのも、髪結い床の「床」である。