容疑者の手錠の部分にぼかしをかけて放送する理由

Vol. 290
 容疑者の手錠の部分にぼかしをかけて放送する理由

40歳以上なら知っているはずだが、1981年にロサンゼルスで、当時非常にマスコミを騒がせた殺人事件があった。保険金目的の犯罪とみなされて逮捕された男は、結局殺人罪について最高裁で無罪が確定したものの、長い間刑務所に収監されることになる。

無罪となった容疑については、逮捕されたからといって犯罪者ではない。しかし、一般に逮捕される=犯罪者というレッテルが貼られるのは事実である。それまでは手錠姿をマスコミが隠すようなことはなく、警察も報道関係者用に写真や映像を撮らせていた。

男はこの事について裁判で訴える。逮捕されただけで有罪が確定していない者に対して、犯罪者であるかのように扱われ報道されるのは、人権を侵害しているという考えかたからだ。実際、無実の可能性がある逮捕者に対し、一様に犯罪者であるかのような扱いをしてきたのは確かで、男は勝訴する。

それからマスコミは、手錠にぼかしをかける、警察は手錠をしている部分に布をかけるという自主規制が始まったのである。しかし、事の本質は、手錠をはめられた逮捕者を犯罪者としてみてしまう側にあるのかもしれない。