本来、床の間というのは、室町時代(南北朝時代)において、壁に掛けた仏画の前に花瓶、香炉、蝋燭を置く机が、備え付けになった押板と呼ばれるものが原型で、その名残から現在でも掛け軸や花瓶を置いている。床の間は権力者や高貴な人が床の間を背にして座る、上座としての役割を持っていた。
江戸時代でも屋敷に床の間を持っているのは、権力者である武士がもっぱらで庶民に普及していたわけではなく、財をなした豪商などが、武士を通す部屋として床の間がある部屋を利用するといった程度である。豪商の邸宅は、歴史的な建造物として保存されているものも多いが、床の間があるのは富の証であるとも言える。
つまり、床の間というのは、掛け軸や花瓶など装飾を施して、大事な客を招き入れる部屋だけに設置される、いわば特別室に備えられた設備なのである。