飽食の時代はいつのまにか飽食であることを忘れさせ、最後にいつ口にしたかわからないほど、金平糖は身近にあるお菓子ではなくなった。子供のころに金平糖が駄菓子屋に置かれていた時代に生きていれば、子供ながらにどうしてイボイボが出来るのか不思議に思ったことがあるだろう。
驚いたことに、未だに金平糖のイボイボができる理由は科学的に解明されていない。だが、ある程度推測はされていて、理由は次のような現象である。
金平糖は、銅鑼(ドラ)と呼ばれる傾いた大きな中華鍋のようなものに、種となるザラメやケシの実を入れ、回しながら熱い糖蜜(グラニュー糖や氷砂糖を溶かしたもの)をかける工程を繰り返す。撹拌されているとはいえ、種が糖蜜で均一に覆われることは少なく、また撹拌される過程において、糖蜜の粘度が高いことによりどこか一点が伸び、固まって突起が生じるのはわかりやすい。一度いびつになると、その部分は糖蜜に触れやすくなりイボイボが成長していく理屈だ。
どうしてあのような多くのイボが比較的均一に現れるのか、とうの昔に解明されていても良さそうなものだが、金平糖職人が長い時間を掛けて作りだす造形美は、解き明かせないほどの技術の結晶だという事なのだろう。