食べ物や飲み物が気管に入らないのはなぜ?

Vol. 517
 食べ物や飲み物が気管に入らないのはなぜ?

ときどき食べ物が気管に入ってしまうと、しばらくの間むせてとても苦しくなる。これは肺という人間にとって重要な器官に異物を混入させないための重要な防御反応であり、喉によって食べ物と空気を振り分ける機構を第一の安全装置とすると、第二の安全装置が働いた結果である。

全く意識はしていなくても、食べ物を飲み込むと自然に食道を通って胃に入る。ここでキーワードになるのが「飲み込む」という行為だ。

医学的には嚥下と呼ばれる飲み込む行為は、約1秒間の間に実に様々な喉周辺の動きを見せ、一度食べ物を飲み込んでからは、自分でその動きを制御することができない不随意運動となる。つまり、食道と気管への振り分けは自動的に行われているのである。

食道と気管は隣り合っているが、喉頭蓋と呼ばれる蓋が、飲み込む動作のときにだけ気管を塞ぎ、自然と食べ物は食道に流れる。これもまた意識はしないが、飲み込む動作をしているときは、鼻から空気を吸えない。このように、普段は空気を取り入れるための状態を保ちながら、食べ物を飲み込むときだけ特別な動きをするように人間の体はできている。