マンションやビルなど、大きな建設物には、定礎(ていそ)と書かれたプレートが大きな石や壁に埋め込まれて設置されていることが多い。大抵の場合、定礎と書かれたすぐ近くに、建設された日時を記してあるので、見たことはあるだろう。
この定礎は、本来は柱を支える礎(いしずえ)を定めるものなので、建設の始めのほうで置かれるものであったが、その意味合いは徐々に形骸化していった。現在では建物が完成に近づき、それまでの無事とこれからの安泰を祈願するための1つの儀式として、定礎石を置くのが習慣になっている。
必ずではないが、定礎石には奥に定礎箱が入っていて、竣工当時の時勢を象徴する新聞や、建設に携わった人たちの名簿・図面、お札などが入れられている。お札は地鎮の意味もあるにせよ、新聞や名簿などに個別の意味があるわけではなく、内容については発注者とも相談の上で決める。定礎箱は、一度定礎石を設置してしまうと、あえて取り外してしまうことはないことから、通常は建物が壊されるまで中を見ることができない。