ヨットが向かい風でも前進できる原理

Vol. 606
 ヨットが向かい風でも前進できる原理

正確に言えば、向かい風に対して真っ直ぐ正面方向へ風に対抗して進むことは、ヨットだけではなく帆船では不可能だ。帆船では帆に風を受けて進むので、追い風でなければ進めないと思っている人も多いだろう。ヨットの場合、ジグザグではあるが方向として向かい風に向かって走ることが可能である。

その理由は帆の向きにあり、膨らんだ帆に対して縦に風を受けるように向きを調整すると、帆の表面を流れる空気は2つの流れが生じる。膨らんだ側には膨らみに沿って速く空気が流れ、そうでない側は遅く流れる。2つの流れによって気圧に違いが生じ、それが揚力と呼ばれる力になるのだ。

ところが、揚力は帆の膨らみに対して垂直方向に発生するので、そのままでは船体が向いている方向から見ると斜めに横滑りのような状態になる。しかしセンターボードの働きによって斜め方向の力から横の力を相殺し、縦の力だけを取り出すことで、前に(風に対して斜め前に)進めるのである。帆の角度を変えて逆向きの力を得ると、ジグザグの逆方向に進むことができるようになる。