今はそう呼ばないのかもしれないが、スネのことを弁慶の泣き所という。泣き所とは良くいったもので、スネを間違って強く打ちつけると、転げ回りたくなるくらい痛い。正直なところ経験したくない痛みで、豪傑で知られる弁慶でも泣くほどだというのだから当然だろうか。
スネは、手で触れば簡単にわかるように、膝下からかなり下のほうまで、薄い皮1枚のほとんど骨同然の状態になっている。このサイズの骨がまともに筋肉や脂肪に覆われていない場所など他にはなく、なおかつ神経が近いために痛むのだ。
考えただけでも痛いスネだが、格闘技の世界にはローキックといって相手の足を蹴るときに、より硬いスネを多用する。蹴られる側のダメージは相当だが、蹴るほうだって並みの痛さではない。そしてスネを武器として使うための鍛練法は、単に痛みに慣らす以外の方法がなく、瓶などを使ってスネを叩くという。