お墓参りの時、墓石に水をかける理由

Vol. 632
 お墓参りの時、墓石に水をかける理由

風習によって違いはあるが、お墓参りに行くと墓石に水を掛ける人は多いだろう。水を掛けることで汚れを洗い落とすという観点で行っている人もいるが、本来の水を掛ける行為は、仏になった故人に対して、水を与えるという意味があるとされる。

この考えかたには諸説あり、死者が輪廻する6つの世界のうち、餓鬼界にいるときでも喉が乾かないように水を与えるというもの、水によって体を清める作法があるように、墓石も同じだという考えかたなど、いくらでも理由を付けることができるし、仏に頭から水を浴びせる行為は良くないとする説もある。

しかし、多くの人にとって先祖が眠る墓石が風雨に晒されて汚れているのを見逃せず、手を合わせる前に、先祖に対して失礼のないようにしようとする心から水を掛けることが多いだろう。その気持ちこそが大切なのであって、それで正解なのである。宗教的な観念を持ち出せば、水を掛けることが単なる儀式になり、先祖を敬う本来の気持ちが薄れかねない。そもそも墓石を綺麗にしてあげようという気持ちを持った人だからこそ、墓参りに訪れるのだ。