国替え、大名の引っ越し事情

Vol. 646
 国替え、大名の引っ越し事情

大名の国替えとは、豊臣秀吉の時代から江戸時代にかけて行われた、いってみれば転勤のようなものである。ただし、そのスケールがケタ違いで、治領を替えるというのは、ある者にとっては大恩賞であり、ある者にとっては厳罰となる。

単に転勤というものではなく、最低でもトップである大名とその配下の武将たちの全ての家族が移動する。今でいうところの都道府県庁が、いきなり国から変われと命令を受け、職員が丸ごと入れ替わるのである。その苦労は想像に難しくなく、通信や交通の発達していない当時では、移動するほうも明け渡すほうも大変な出来事だ。

更に大変なのは、そこに住む住人である。統治者が変わる程度ならともかく、既得権益が全て失われるとすれば、袖の下(賄賂)で大名家と通じていた商人などは大打撃だろう。圧政に苦しむ人々は歓迎したかもしれないが、次の領収が善政を行うとは限らないのである。

実際の国替えでは、大名家の召し抱える職人の移動もあったようで、例えばソバで有名な信州は、大名の国替えによってソバ職人も移動し、新しい領地がソバで有名になるなど、国替えによる風習・文化の移動も見られる。