平家落人の村は、ほとんど平家とは無関係

Vol. 889
 平家落人の村は、ほとんど平家とは無関係

本当に平家の落人から形成されていった村から叱責を受けるかもしれないが、平家落人の村や平家の隠れ里などと呼ばれる平家ゆかりとされる地域には、怪しい面が多いとされている。落人とは、戦に負けた勢力側が捉えられて処罰(事実上の落命に近い)されるのを防ぐため、戦場から散り散りになった人のことで、特に平家に対して使われることが多い。

落人になる理由は、単に命が惜しいからではない。特に武士は自ら命を絶つことを潔しとし、その証拠に多くの者が敗戦を悟ると自害した。落人になってまで生き延びるのは家の再興が掛かっており、主流の系統の血を持つものは、配下の者が何としても逃がすために戦うのである。

落人はそういった経緯があることから、人里離れて見つかりにくい場所や散村に居を構える。そのまま時が過ぎ何代も入れ替わってしまうと、史実として残されているはずもないのだから誰も確かめようがないのである。子は親が平家だと言えば信じ、そして孫から曾孫へと伝えられていく。平家側に与しただけの者と平家の血筋である違いは、次第に曖昧になっていくのだ。