胃は自らの胃液で胃を消化してしまわないの?

Vol. 890
 胃は自らの胃液で胃を消化してしまわないの?

理科の実験を思い浮かべると、物を溶かすことができる代表的な物質は「強い酸」だ。胃酸と言われるように塩酸を含む胃液を分泌し、食べ物を溶かし殺菌まで行ってくれる働き者として、胃は日夜励んでいる。

胃液は逆流すると食道を傷つけ、ひいては喉まで達すると簡単に炎症を起こしてしまうほど、その強酸性は人体にとって有害である。それなのに、なぜ我々は胃液を毎日2リットルも分泌しながら生きていられるのだろうか?

実は胃であっても胃液の前には無傷ではいられず、粘膜によるバリアだけでは胃液からの攻撃に万全ではない。胃は自らも攻撃されることを前提に胃液を出し、細胞を増殖させることで修復しながら常に守りきっているだけだ。ストレスなどにより防御が手薄になった時、誰もが消化器科の門を叩くことになるのは容易に想像が付くだろう。